第19回ポップアスリートカップくら寿司トーナメント2025。関東予選の最終日は、2勝したチームがそれぞれ「冬の神宮」全国ファイナルの出場権を獲得した。夏よりもさらに成長した6年生をメインとする戦いはハイレベル。代表決定戦はいずれも白熱し、決勝点が生まれたのは終盤だった。リポートの後編、3つのトピックスは4チームと戦いぶりに迫る。
(写真&文=大久保克哉)
※前編の3TOPIC➡こちら
■第1ブロック決勝
◇11月3日 ◇彩湖・道満グリーンパーク

▽A面第3試合
阿久津スポーツ(栃木)
000100=1
10001 X=2
西埼玉少年野球(西埼玉)
関東第1ブロック代表
にしさいたま
西埼玉少年野球
[埼玉県]
出場=2年ぶり2回目
Topic➍
タレント軍が夏冬連続で全国へ
西埼玉少年野球の創立は1973年で、2016年に現チーム名に改称。近年は選手層の厚みと投打のハイスキルが際立ち、綿貫康監督(=下写真)は特に投げることの指導に定評がある。それと、ここ6年連続でNPBジュニアを輩出していることとは無縁ではなかろう。
今年も左右の本格派投手2枚が、プロ野球のジュニアチームに選ばれている。左腕の香川幹大主将が巨人Jr.に、右腕の新井一翔がヤクルトJr.に。

秋口からはNPBジュニアでの活動がメインとなり、年末の夢舞台(NPBトーナメント)までは所属チームをほとんど留守にする。このため、NPBジュニアに否定的で、セレクションの受験を禁じるチームもあったりするが、西埼玉は「個人の夢」とそのトライを全面的に支援している。
「今年も(ジュニアで)2人が抜けましたけど、残った選手たちもモチベーションが高いまま、神宮を目指してやってこれたと思います」(綿貫監督)
8月には全日本学童マクドナルド・トーナメントに初出場(=下写真)して1勝している今年のチームは、大型のタレント軍団だ。また5年生以下の新チームは9月の新人戦で県王者(2年ぶり3回目)に輝いており、こちらにも有能なタレントがいるが、「ジュニアの2人も戻ってくると、6年生の壁を超えて頭から試合に出られるほどの5年生はまだいませんね」と綿貫監督。

関東最終予選の最終日は、香川主将と新井も久しぶりに「西埼玉」のユニフォームでプレーした。
二和タイガース(千葉)との初戦は香川主将が先発し、快速球で多くの打者を圧倒しながら、4回無失点とゲームメイク。二番手の右腕・高橋龍政(=下写真)がまた、きれいなフォームから惚れ惚れするようなストレートを投じて無失点リレーを完結させた。

そんな西埼玉であっても、続く関東代表決定戦の相手は難敵だった。栃木の名門、阿久津スポーツは昨秋の新人戦で県王者となり、最高位となる関東大会で準優勝している。
年が明けて、22年ぶり2回目の全国出場はならなかったものの、県内の全チームによる8月の巨大トーナメントを制覇。栃木県の6年生たちはその夏季大会をもって引退するが、阿久津の最上級生8人は「冬の神宮」の予選を勝ち進み、卒団を先延ばしにしてきた。

栃木勢の伝統とも言える、堅守と小技が持ち味。西埼玉は6年生の数が倍、体格とパワーも明らかに上だったが、阿久津ナインはいさかかも怯んでいなかった。OBでもある小林勇輝監督は試合後、真っ先にこう口にしている。
「相手の先発の右のすごい子(西埼玉・新井)に対して、球数を稼いで降ろせたまでは良かったんですけどね…」

1回裏、西埼玉は三番・水村玲雄が左前打(上)。続く四番・新井の右越え二塁打(下)で1点を先取

阿久津は1回表に四番・湯浅朝陽が右前打。2回、3回には四球を選ぶなど、無得点でも簡単には攻撃を終えなかった。
守っては1回裏に連打で1点を失うも、2試合連続で先発したエースの栗林海斗は、最少失点に留めて既定の70球に。2回から登板した二ノ宮直之はストライク先行の打たせて取る投球で、テンポよくアウトを重ねた。

1回表、阿久津の三番・平林はフルスイング(ファウル)もした上で四球(上)。二番手の二ノ宮(下)は緩急の投球が冴えた

そして迎えた4回表だ。守る西埼玉は連続ミスで一死一、二塁のピンチを招いたところで、二番手の高橋を投入する。
三ゴロ(二塁封殺)で二死一、三塁となるも、阿久津は意気消沈どころか十八番を繰り出した。内野陣の前進守備が解かれたところで、右打席の九番・髙橋伸は「出ると思ってました」というセーフティバントのサインに心の中で頷く。そして三塁線へ絶妙に弾むゴロを転がして内野安打とし、1対1に追いついた。

1点を追う阿久津は4回表、二死一、三塁から髙橋がバント安打(上)。得意のパターンで同点とし、応援席も盛り上がる(下)

「同点にしてから(二死一、二塁)、もう1点が欲しかったですね。相手の打線は一番と四番がきっちりと仕事してましたけど、ウチは上位打線が1安打でしたからね」
阿久津の指揮官を脱帽させたのは、NPBジュニアの2人だった。初回は新井が適時二塁打。そして1対1で迎えた5回裏には、香川主将が手柄を立てる。髙島智史の右越え二塁打から二死一、三塁として、左打席から左越えのタイムリー二塁打(=下写真)。

この1点が決勝点となり、西埼玉の2年ぶり2回目の全国ファイナル出場が決まった。タレント軍によるエポックメイキングな1年は、まだ終わっていない。
一方、敗北と同時に卒団を迎えた阿久津の6年生たちには涙もあったが、小林監督はこう言って労った。
「もうちょっと粘り強くいけたら良かったんですけど、この試合に限らず、これまでの取り組みも含めて、6年生は後輩たちの良い手本を示してくれたと思います」

■第2ブロック決勝
◇11月3日 ◇彩湖・道満グリーンパーク

▽B面第3試合
吉川ウイングス(東埼玉)
010000=1
00003 X=3
豊ナインズ(茨城)
関東第2ブロック代表
ゆたか
豊ナインズ
[茨城県]
初出場
Topic❺
気負わず連続ミラクル!!初の大舞台へ
茨城王者の豊ナインズが、関東予選最終日にミラクルを連発し、「冬の神宮」行きを決めた。
戸塚アイアンボンドズ(神奈川第1)との初戦は、逆転に次ぐ逆転のシーソーゲームに。6回裏に5対5に追いつくと、特別延長の7回に逆転サヨナラで全国に王手をかけた(7対6)。
「この大会に照準を合わせて、もう何が何でも全国に行くぞ!!とやってきました。ホントに子どもたちが頑張ってくれたと思います」(里見浩之監督=下写真)

タフな戦いと興奮も冷めぬ成功体験が、続く関東代表決定戦でも生きたのかもしれない。試合は2回、松浦遥史(5年)のタイムリーで1点を先取した吉川ウイングスのペースで進んだ。ナインズは耐える展開が続くも、追加点を相手に与えなかった。
4回には無死満塁の大ピンチに、1-2-3の併殺を決めた。続く5回には一死三塁からのスクイズに対して、打球を処理した捕手・里見風雅が本塁へ飛び込んでのクロスプレーで、間一髪のタッチアウトに(=下写真)。

切れそうで切らさない緊張の糸。ここまでの粘り強さはなぜ、どうして生まれてくるのか。指揮官の答えはこうだった。
「今日に限らずなんですけど、『自分たちのやるべきことをやろう!』というのをずっと言い続けてきてますし、子どもたちも分かっていたと思います。決勝だからって変に気負う必要はないし、気合いの空回りだけはしないように、と」
1点ビハインドのまま迎えた5回裏の攻撃は、先頭の七番・中込英太が中前打も、後続が倒れて二死となる。だが、そこから敵失で同点とすると、二番の里見風(=下写真㊤)から5年生の飯泉空大(㊥)、さらに鶴見飛優心(㊦)までの3連続タイムリーで3対1と一気に勝ち越し、そのまま逃げ切った。



「今年は2アウトからでも点が取れるチームなんです。『誰かが出れば変わるぞ!』と、前半の苦しい展開が続いたときから言ってきたのが、5回の逆転につながったかなと思います」
興奮の面持ちで話した里見監督は、就任1年目で、息子が1年生。また5年生以下の新チームは、新人戦で県準優勝と、このところの躍進が目覚ましい。「全国」と名のつく舞台は、今度の神宮が初となるが関東予選同様に、マイスタイルを堅持しながら勝機を探ることになるのだろう。

「もちろん、トップを目指しますけど、まずは初戦に照準を合わせて。気合いの空回りをしないように、またいきたいと思います」(同監督)
12月6日の全国ファイナル1回戦のカードはすでに決まっている。豊ナインズは今夏の日本一、大阪・長曽根ストロングス(関西第1ブロック代表)と対決。西埼玉の相手は、愛知・名古屋ドジャース(東海代表)だ。
Topic❻
最後の壁にまたも阻まれ…
夏の全国大会(全日本学童マクドナルド・トーナメント)の予選は、いまだに地域選抜チームが多数出場している埼玉県。全国的にもレアな地域にあって、吉川ウイングスは単独チームでその酷な予選を勝ち抜き、全国大会に2回出場している。
一方、この「冬の神宮」にはまだ縁がない。自主対戦方式の東埼玉大会を昨年に続いて制覇し、続く関東予選でも2年連続で代表決定戦にまで駒を進めたのだったが…。

「夏のマクド(全国大会)に行けなくなってホントに悔しかったんですけど、12月の神宮に行って取り返すしかないと思ってやってきました」
こう話したのは昨年から主力の正捕手、大浦大知だ。捕手のスキルとフットワークは世代でも屈指で、人の心も熱くするハートの持ち主でもある(「2025注目戦士⑭」➡こちら)。
先輩たちの無念も晴らすべく戦ってきた6年生たちだが、夏の全国予選は県準決勝で涙。西埼玉少年野球に4対8で敗れた。それからの約5カ月は、捲土重来を期して歩んできた。

迎えた関東予選の最終日、随所で際立ったのは大浦の存在感だ。高輪クラブ(東東京)との初戦では、序盤のピンチにタイムを取って内野陣を集め、落ち着かせる場面も(=上写真)。右打席からレフト方向へ大飛球も放ち、救援のマウンドではキレのある速球を投じるなど、7対1の勝利に貢献した。
続く関東代表決定戦でも、マスクをかぶっては打球への鋭い反応で小飛球も好捕(=下写真)。3回には相手の二盗も阻んでみせた。そして5回表までは1対0とリードも、勝利には届かなかった。

「5回裏に同点にされたところで、自分たちでタイムをかけていれば、結果も変わったんじゃないかなと…」
敗退後の大浦は涙に暮れ、それ以上は言葉が続かず。抱いてきた夢の大きさと本気度がうかがえた。また、季節も移ろうなかでの成長が見て取れたのは一塁を守る女子、浅子琉花だった。
筆者が彼女を認識したのは2月の末、大浦をメインで取材していたときだ。この日の対外試合の守備中に、塁上の走者のケアを怠って進塁を許した一塁手の浅子は、すぐさまベンチに下げられてしまう。そして玉井秀明コーチと話しているうちに、涙をポロポロとこぼしていた。

写真上は2月末の一枚で、左から2人目が浅子。写真下は11月の関東予選時

浅子のミスは、不用意が招いたポカに近い。岡崎真二監督は内外で広く慕われる人格者だが、勝負においてはボーンヘッドを笑って流すほど、ぬるくない。また浅子にしても、やるべきプレーは頭では分かっていたはず。でもいざ本番で、すっかり飛んでしまっていた自分がもどかしく、悔しくて泣いていたのだろう。
あれから約8カ月。背中まであった髪をバッサリとしていた浅子は、プレーでも男子と見分けがつかぬほど、逞しくなっていた。象徴的だったのが、代表決定戦の5回裏の守りだ。
一死一塁から、一塁ゴロを捕球した浅子は迷うことなく二塁へ送球し、フォースアウトを奪った。この時点で1点をリードしていたウイングスにとって、二死二塁と二死一塁では感じるプレッシャーも違う。浅子はそれも理解し、準備をしていたから、当然のプレーを確実に遂行できたのだろう。

その後、適時失策と3連打で逆転されて敗北。「悔しいです!」と泣くばかりの浅子だったが、その成長ぶりはウイングスの8カ月の取り組みを物語っていた気がする。
「あと一歩、勝ち切れないのがウチの弱さ。藤田がよく投げてくれたんですけどね。1球に対するこだわりというか、執念というものが少し、相手チームに負けていたのかなとは思いますけど、追加点が奪えなかったのが響きましたね。攻撃の采配に悔いが残ります」
残り2イニングまで勝っていた。冬の神宮に手を掛けてからの、悪夢のような逆転負け。岡崎監督(=下写真)はその責任を選手たちに押し付けなかった。また保護者を集めての短いミーティングでは、自分の不甲斐なさを詫びる言葉も聞かれた。

2回表に二番の5年生・松浦遥史の左前タイムリー(上)で先制。先発完投の藤田陽斗(下)は自責点0だった

確かに、2回表に先制して以降、追加点を奪う決定的なチャンスが2度あった。そしていずれも逸したのは事実。しかし、ベンチの策や意図は、部外者にも十分に理解できるものだった。
4回の無死満塁で併殺打に倒れたのは、2回に先制タイムリーを放っていた二番の5年生。たとえ凡退でもクリーンナップを迎えることから、強攻策はごく真っ当な選択だった。また5回には一死三塁からスクイズに失敗(三走が本塁憤死)したが、打順は七番。しかも四球とミスでもらった好機であり、無安打で加点すれば、心理的にもより優位に立てるはずだった。

だが、指揮官は同情めいた質問をやんわりとこう遮った。
「全部、たられば、なので仕方ないですね。それを言えば、5回の守りも2アウトから普通の内野ゴロを押さえておけば、0点で終わっていましたから」
己にも厳しい岡崎監督は、グッと何かを堪えているようでもあった。美しい夕焼けを顧みることもなく、ゆっくりと歩いて戦場を後に。そして2日後、筆者にメッセージが届いた。
『この悔しさがあるからこそ、来年以降巻き返していけると信じて、次の世代とともに頑張ります!』
